【2022年版】工場や倉庫で使える12種類の位置情報測定技術まとめ

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製造業においては「カイゼン」と表現され認知も高まる生産現場での改善活動や物流倉庫における改善活動の入り口となるのは、問題点をみつけることといわれます。また、改善活動は継続的にという視点も重要です。 

そのような中で、検討されるのが位置情報の測定(動線の可視化)です。 

この記事では、これまでに100を超える工場や倉庫のお話を伺ってきた私たちなりの視点で、位置情報測定についてまとめてみたいと思います。 

この記事の目次 

工場や倉庫内での位置情報測定を検討する背景 

ここ数年で位置情報測定(動線の見える化)を検討される背景に変化があるように感じます。 

私たちが工場や倉庫の皆さまとお話を始めた頃には、ずばり「削減」という切り口でのお話が多くありました。例えば「フォークリフトを減らしたい」というご要望です。 

それに対し、ここ最近では「生産性向上」や「働き方改革」といった視点からお話をお聞きすることが多くなりました。生産性向上を検討する上では、もちろん無駄の削減の観点も入ってきますが、それ以外のご要望も多くお聞きするようになっています。 

これは位置情報の精度向上による活用の幅や改善文化の広がりが背景にあるのではないでしょうか。 

また、位置情報測定をしたい理由としては、以下のような内容をよくお聞きします。 

  • 作業効率の改善に取り組みたい(作業者や移動体の動線確認と教育への活用) 
  • レイアウト変更による生産性改善に取り組みたい 
  • 作業者の負荷軽減(働き方改革の視点) 
  • 無駄の削減に取り組みたい(限られたリソースの有効活用) 

いずれも改善活動の入り口である現状把握や問題点発見のための可視化を目的に、位置情報測定をご検討されるケースが多いようです。 

また、改善に取り組まれたあとの効果測定における可視化(改善活動の継続を視野)や多拠点での取り組みの横展開など、効率的かつ柔軟な可視化ツールとして当社の動線見える化ツールにお問い合わせいただくケースが増えています。 

12種類の位置情報測定技術 

位置情報を測定する技術には、さまざまなものがあります。ここでは、各技術の概要をまとめておきたいと思います。 

1. Beacon 

基本的にBeaconからの電波強度での測定。精度には課題があるケースも。屋内外での計測が可能になる点はメリットが高い。 

壁面などに固定しロケーターとして利用する際、複数のBeaconを読んでいる場合は、電波強度や読み取り回数が多い箇所を現在地として計測。(当社にて検証実績あり) 

移動体が持つ場合は、Beaconから発信する電波を受信した時の電波強度でBeaconとの距離を測定する。精度が比較的荒く、電波の反射などの影響を受けやすい。キャリブレーション(位置合わせ)の手間がかかる。 

2. Bluetooth 5.1以降

Beaconからのデータに角度情報を組み合わせることで精度を向上させることが可能。受信側のアンテナはある程度の大きさが必要。アンテナの大きさやデータの計算量の多さから、今後スマートフォンで角度情報を組み合わせた位置測位が可能となるかは不明。 

3. RFIDパッシブ型

RFIDのバッテリーを持たないものがパッシブ型。形状としては、モノなどに貼り付けるシールタイプ(タグと呼ばれる)やカードタイプが存在。 

シールタイプのRFIDタグ

当社の動線見える化ツールは、RFIDタグをロケーターとして利用し、ロケーター設置の電源確保や設置工事が不要な仕組みを実現。移動体が持つリーダーによりタグ情報を読み取ることで位置情報の測定を行う。計測範囲はタグのサイズにより、多くの場合2〜5メートル程度。 

4. RFIDアクティブ型

RFIDのバッテリーを持ったもの(電池を内蔵)がアクティブ型で、信号を常に発信する。RFIDパッシブ型に比べて1~100m以上の広範囲で通信可能になる。 

5. 超音波

超音波センサを用いて位置情報を検知。空気を伝達媒体とするため、風の影響や温度や発熱体の影響を受けやすいが、検出距離が長いことや対象物の材質などには影響を受けづらい特長がある。 

6. 地磁気

地球の持つ磁気によってつくりだされる磁場を使い位置情報を測定。地磁気は各場所で固有の値を示す。事前にその値を計測し図面などをマッピングさせておくことによって、移動体の位置情報測定を可能にする。屋内外での利用できるのも特長。 

7. UWB

UWBとは超広帯域無線とも呼ばれる無線通信方式の一つ。複数の固定機を設置する必要があるものの、精度が高い位置情報を取得できることが大きな特長。導入時のキャリブレーション等の調節作業に手間がかかるケースも多い。 

UWBはスマートフォンにも搭載されるなど注目されている技術の一つ。 

8. カメラ

カメラからの情報の画像解析と、他のセンサーからの情報の組み合わせで位置情報測定を実現するケースが多い。タグは不要だが、カメラの設置にコストや手間がかかる。 

9. LiDAR

米国のVelodyne Lidar社のLiDAR

LiDARは光を用いたリモートセンシング技術。MAPと呼ばれるものを作成し、MAP内のどこにいるかを推定する。MAP作成のため、最初にLiDARを搭載し経路を走行する必要がある。自動運転の技術にも採用。LiDAR自体が高価で、人につけるのは難しく、車両前提となる。(当社にて自動運転技術における検証実績あり。自動運転関連の情報はこちらから) 

10. GPS(単独測位)

複数の衛星から送信される原子時計の時刻情報から3次元的な位置を測位。タイムラグがあり、また数メートル~数十メートルの誤差がある。また、屋内では使用不可。車両のトラッキングなどはできるが、構内の位置をピンポイントで取得するのは難しい。(当社にて検証実績あり) 

11. GPS(RTK測位)

固定局と移動局の2つで衛星からの信号を受信し、固定局からの補正情報で移動局の位置相違の精度を高める方法。 

条件によっては、cm級の精度がでることもある。ただし、アンテナを空から見えるように配置する必要あり。(当社にて検証実績あり) 

12. PDR(歩行者自律航法)

加速度センサやジャイロセンサなどの複数の自律動作するセンサを使い、基準位置からの移動予測の積み重ねで現在位置を推測。(当社にて検証実績あり) 

どんな場所でどのように使うのか、目的を決めて導入技術の選定を

さまざまな位置情報の測定技術、またこれらの技術を採用した製品・サービスも各社より提供されています。

技術や製品・サービスの選定においては以下が検討のポイントになってきます。

  • 屋内なのか屋外なのか 
  • 精度はどのくらい必要なのか(人の細かい動きがみたいのかなど) 
  • 測定する場所には電波などを遮るものや影響を受けるものが多いか 
  • 同時に測定したい、または測定の必要がある対象の数(同時測定の数が多い場合には、手法によってハードウェアの用意などのコストにも要注意) 
  • 設備投資はどれくらい可能か、工場などの場合ラインを止めての設備工事などは可能か(設備工事が不要であればラインを止める必要がない) 
  • レイアウトが変わったりすることがあるか 
  • 継続的に利用するか 
  • 多拠点での取り組みはあるか 

こういった条件で、技術や製品・サービスの選定が変わってきます。 

また、PoC(試作開発の前段階での検証)を行ってみることも有効です。 

私たちの経験からも実際に現場にご訪問することで初めてわかること、見えていなかった課題も出てくることがあります。また、当社の動線見える化ツールはRFIDパッシブ型を採用した製品ですが、Beacon、GPSなどその他技術検証をお客さまと一緒に行うケースもしばしばございます。お客さまそれぞれの改善活動の方針、現場での文化や諸条件によって、採用される技術やサービスも異なってきます。 

もしもお困りのことやご不明点などがございましたら、いつでもご相談くださいませ。 

※ 当サイト内に掲載されている商品またはサービスなどの名称は、各社の商標または登録商標です。 

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